現実経済を説明しよう(Attempt to explain the actual economy)の最近のブログ記事
うーん,正直どう感想を述べたらよいのかわからない.たぶん僕はこの本の想定読者層に入ってないから.
経済学の院生として述べると,著者の吉本佳生さんの名前も聞いたことないし,研究業績を見ても,海外学術誌に業績(英語論文)が一本も無い.なので,研究者としての著者は残念ながら一流とは言えない.が,本(日本語)はたくさん書いているようで,経済学の研究者というよりも,経済学の啓蒙者という感じか.そういう観点から本書を眺めると,経済学のことをまったく知らない一般人(主婦や高校生など)が主なターゲットなのだろう.タイトルもそれを意識してか,上手につけられている.
で,内容は,「コストと言っても,お金だけじゃなくって手間隙(=労力&時間)とかもあるんだよ」という(当たり前の)ことを何回も繰り返し述べている,という感じか.このことが軸にあって,その他の経済学の重要概念(比較優位,機会費用,規模の経済,範囲の経済,価格差別etc)がちらほら紹介される,という感じ.
スタバの話は,たくさんある章のうち,一つの章で扱われているに過ぎない.で,タイトルの意味するところは「スタバからしたらグランデ売ったほうがmarginal profitが大きいから儲けられるし,消費者からしたらコーヒーの単位当たり価格が安く買えるからグランデ買ったほうがお徳感が大きいね」ってことでしかない.
ある程度経済学を知っている人間は読んでも時間の無駄だと思う.しかし,日々の生活に直接関係あるトピックばかりを取り上げ,簡単な経済学を使って分析している本書を読んで「経済学って本来,もっと身近にあるべきものなんだよな」と思ってしまった.院生やってると数式と戯れているだけで現実経済から遠ざかってしまうので,この点は現実経済に目をちゃんと向けている本書はなかなか偉いなとも思う.それに,著者の洞察はあたり前のことばかりだけど,たまにけっこう深いなと思わされることもあった.
高校3年生の春休み(=大学入学直前)の自分に読ませたい.
タイトルがお上手ね.スライド8「Let's see what the smart guys are doing...」あたりを読んで,smat guysに騙されないよう気をつけよう♪と思いました.いや,ほんとに.自分の資産は自分で守るのだ.
あ,ちなみにこれはマンキューのブログで紹介されてた.MankiwやらCampbellやらの講義を受けられて,ここの学生はほんとに幸せね...
(参考)
『サブプライム問題について少し分かってきた気がする』
1)アメリカで資金はジャブジャブあって,貸付先を探していた.
2)貸付先の一環として,サブプライムローンに資金が行った.
3)住宅価格が上昇局面では,サブプライムローン債務者が返済できなくなっても,担保となってる住宅を売れば返済できた.
4)返済できるどころが,売買益すら得られることが分かった.
5)サブプライムローンはその定義上,通常ローンよりも金利が高い(=貸し付ける方からすると利回りが高く,おいしい貸付先ということ).にも関わらず,2),3)のような状況だったので,貸し倒れリスクは低いように見えた.
6)調子に乗って,サブプライムローンをどんどん貸し付けた.かなり強引な手法で低所得者層に,サブプライムローンを買わせた.
7)証券化すればリスク分散できるので,証券化した.
8)証券化したものを,さらに繰り返し証券化したりした.その結果,米格付け機関(ムーディーズなど)が、サブプライムローンを組み込んだ住宅ローン担保証券を正しく評価できない状態となった(実力よりも高く格付けしていたということ).
9)この証券化された住宅ローン担保証券を誰が保有したかというと,商業銀行や投資銀行などの金融機関.証券化された資産は安全なので(特に繰り返し証券化されたことによって,サブプライムローンが組み込まれていることが分かりにくくなって安全だとカンチガイしたってこと.実際,8)でも書いたとおり,米格付け機関も安全だとカンチガイしてしまったわけで),安全資産を持ちたいという気持ちの強いアメリカの商業銀行なんかは,住宅ローン担保証券に手を出してしまったというわけ.
10)さて,住宅価格が上昇している局面では問題はないことに注意しよう.なぜならば,返済が滞るサブプライム債務者がほとんど出現しないためである.
11)ところが,住宅価格上昇率が2006年に入って以降急速に鈍化!ここから問題が表面化する!
12)サブプライムローン債務者の返済が滞るようになる.住宅ローン担保証券が紙くずになったりするわけ.住宅ローン担保証券を保有する商業銀行や投資銀行は損失を計上するようになる.
13)金融機関は,貸出基準をきつくするので,追加融資を切望するサブプライムローン債務者のもとに資金は回ってこない.
14)サブプライムローン債務者の返済が滞りがさらに増える.より多くの住宅ローン担保証券が紙くずになったりするわけ.住宅ローン担保証券を保有する商業銀行や投資銀行はさらに損失を計上するようになる.
15) 12)~14)をループし,結局,住宅ローン担保証券を保有する商業銀行や投資銀行は莫大な損失を計上してしまう.(ゴールドマンサックス以外,軒並み損失を計上したってニュースや,Citiにアラブが出資したってニュースや,メリルリンチにみずほが12億ドル(約1300億円)出資したってニュースが記憶に新しい.)
16)金融不安発生!
17)株安,ドル安などになり,アメリカ経済先行きが怪しくなってきており,さらに世界株安などを引き起こし,世界経済を不安に陥れている ← 今ここ
1)のところで,どこから資金がジャブジャブ出てきたのか,ということを考えてみたんですが....「各国中央銀行が資金を供給しまくった」と下の参考にあげたIMFのページにはあったんですが.僕は,日銀の低金利や量的緩和みたいな金融政策によって,金がジャブジャブアメリカに流れた,という影響も大きいのかな,と思う.日米間の金利格差がある上に,量的緩和でジャブジャブ資金を垂れ流したので,日本からアメリカに資金がジャブジャブ流れていったのかな,ということです.
某外資系金融機関に勤める人も,「2008年は,過去数十年の中で一番つらい年の一つになる」と言っていたな.大変ですね.自分とその家族の資産は自分で守るために,これからも世界経済のお勉強はちゃんと続けよう.
なんかコメントあったら,適宜ツッコミ希望.
(参考)今回さんこうにしたページをいくつか.
経済,金融,国際情勢,ぜんぜんわかりません,って人は,以下を見るとよいでしょう.漫画のようによめて,それなりに正しいことが書いてあると思います.
やる夫で学ぶサブプライム問題
あと,ウィキペィアの記述が,やっぱりけっこう参考になります.
サブプライムローン@ウィキペディア
それから,これは以前のコメントで知ったやつですが,けっこう参考になりました.
Lessons from Subprime Turbulence @ IMFSurvey Magazine: IMF Research
特に,
Investors have placed excessive trust in rating agencies' approach to structured credit. The ratings methodology for corporate credit risk is fundamentally different from that used for structured credit and yet the ratings that result are placed on the same scale, implying similar potential losses. To avoid future confusion, ratings for the different types of obligation should be clearly distinguished and investors should never just rely on ratings to determine investment policy.というところが,なかなか鋭い指摘だと思った.structured creditとは,マクロリスクのことで,corporate credit risk や個別のサブプライムローンのようなミクロリスクとは,分離してかんがえないといけない,ということだろう.格付け機関や,住宅ローン担保証券を保有していた米の金融機関が,サブプライムローンが証券化されて組み込まれた住宅ローン担保証券というstructured creditを正しく評価できなかった,ってことだろう.
1)円高→日本株安
円高→株安という経路があること自体,よくわかりません.日本は輸出国なので,円高になると輸出してる企業の業績が悪化して,株安になる,というのがいちおうの説明ですが,日経平均のような株式指数がどの程度,為替市場の影響をうけるものなのか,よくわかりません.個別の企業が影響を受けるのはよくわかりますが.例えば以下にあるように,トヨタの例.
外国為替市場では円相場が一時、1ドル=105円台後半まで上昇し、トヨタは下落率が7%を超え、2営業日ぶりに昨年来安値を更新した。2)最近の日本の株安の原因はなに?
ソース:日経平均、終値752円安の1万2573円・2年4カ月ぶり安値 @ NIKKEI NET
原因として考えられる仮説はたくさんあります.
- 1)で述べたとおり,円高→株安という経路が強いという仮説.
- 日銀の追加利上げ観測があって,株安を誘発している(債券保有比率を高め投資家がポートフォリオを再構成するから),という仮説.さらに日銀の追加利上げ観測は,円高要因ともなるわけで(内外金利差を小さくするから),現状の円高はこれによって引き起こされている面があるんじゃないか,ということまでいえそうかな.
- サブプライム問題がやばすぎるという仮説.しかしこれもよくわからんのだが,サブプライムの端を発する世界同時株安が,「根拠なき熱狂」なのか,「経済の実態を反映した結果」なのか,よくわからない.サブプライムって実際,どの程度日本の株式市場に影響をもっているんだろう?(心理的な影響じゃなくって,実物面で)
- その他のいろいろな不安要素があって,根拠なく下落してるだけ,という仮説.サブプライムも含め,原油高騰,与党も野党も頼りない現状,年金不安や医療不安だなんだと,いろいろ心配ごとが多いから,なんとなくみんなリスク回避的になっているのかな,ということ.
- 日本の経済の実態を反映しているという仮説.実態とはなに,ということがあるが,日本の企業の業績なり将来の合理的な見通しが,本当に悪いから日本は株安になってる,という仮説.
3)じゃ,円高はなんでおこってるの?
- 2)の最初の二つ目の項目で書いたように,日銀の追加利上げ観測があって,円高に進んでるって仮説.
- 円が高いというより,ドルが勝手に転落しているって仮説.
- 日本の企業のファンダメンタルが高くってそうなっているよって仮説.これは2)の4つ目の項目の反するが.
円安→株高→円高→株安→円安→・・・・
ってなってるんだろうか?相関関係と因果関係を混同してしまいたい誘惑に勝てない.
ああわからーん.もっと国際経済学,国際金融あたりを勉強しときゃよかったかな....まぁどうせ正しく理解してる人なんてほとんどいないからいいか.
で、ずっとあれを眺めながら登下校していて、あのお店で自転車の修理をしてもらっている一般客を見たことがほとんどない。一度もないかも。自分自身、自転車が壊れても修理店にいったことがない。
で、疑問。なんでつぶれないの?
某先生と話をしていて、なぜか分かった。きっと大口の固定客がいるんだ。郵便局とか新聞配達店とか、自転車を恒常的に使うお店はすべて、あの小さな自転車修理屋さんで請け負っているんじゃないか、と。別にそういう契約があるわけではないんだろうが。おそらく一つの自転車修理屋があったら、一定の半径Rキロの円の中には、他の自転車修理屋はないに違いない。郵便局とか新聞配達店とかの分布状況と自転車の壊れる頻度、一回あたりの修理料金など、いくつかを仮定すれば、「一定の半径Rキロ」を推定することが可能だろう。逆に、実地調査で「一定の半径Rキロ」がわかれば、逆算して自転車の壊れる頻度を推定することも可能だろう。というわけで、これはフェルミ推定の練習問題としておもしろそうですね。
仮に「一定の半径Rキロ」内に新規参入したとしても、あのお店が昔馴染みの店で、地元で顔の知られらた主人がやっていたら、固定客を奪うのは相当難しいんだろうな。きっとそういう絶妙な均衡が成立するように、「一定の半径Rキロ」が決まっているに違いない。
そしてどうせ修理するスペースが必要なのだから、常時お店を一般客向けにも開けておき、一般客が入ってきたらラッキー、という感じで営業しているんだろう。
今回のエントリーのタイトルは、以下の本のパクリです。
さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)
さらにグレーゾーン金利がよくない経済学的な理由は、リスクの程度に適切に対応した金利で借り入れができなくなるから。上限金利を法律で規制することで、その上限に集中してしまうということ。(某教授の受け売り)。
週刊東洋経済で大竹文雄先生と池尾和人先生のお二人が議論しているのは知ってはいたが(おれは読んでない)、なんか、大竹先生のブログのコメント欄でかなり議論を戦わせている模様。
興味がある方は以下を参照。
http://ohtake.cocolog-nifty.com/ohtake/2006/10/post_f3e4.html
気になる記事は以下。
Wake up to the dangers of a deepening crisis by Lawrence Summers
ラリー・サマーズによれば、米国はこれから景気後退局面に入るとのこと。サブプライム問題でゆれた8月に比べて、アメリカ経済の現状は遥かにやばくなっていると。そんなに深刻なんですかね、これ。そういえば今朝の円ドルレートみてびっくらこいた。108円とか。あれ、いつのまにこんなにドル安くなってるんだろう。
そしてついでに言うと、日経平均いつのまにこんなに安くなってんの。11月にはいってから急降下。1万5000割った日もあるじゃーん。ところで、今年の2月の株安の時には、ドイツの武者さんは、年末には2万2000くらいいくと強気予想してたな(参照)。ネット上では、「ということは、今年は下げだなw」という論調が多かった記憶があるが、その通りになってきているんでしょうか。
10月半ばくらいに、日経平均の収益率をGARCH推定したときは、直近時期はそれほど日経平均はボラタイルにでていなかったような気がする。あと、Ito Sugiyama論文の手法で市場効率性の指標を計測してみたが、やはり直近時期に別に異常な水準にはなかった。
話は逸れましたが。。。そう、サブプライム。どう捉えたらいいの、これ。
某教授がサブプイムについて、(1)平蔵が政権から去り日本の銀行がキャリートレードするようになった(2)米国の証券会社がマクロリスクとミクロリスクの違いを区別できなかった(3)米国の制度的問題、とまとめていたのだが。
もう少し自分なりに理解したいんだが、うー、わからん。
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はっきりいって、伝統的な経済学者からすれば、「こんなものは経済学じゃない」と思うだろうし、経済学のことを知らない素人からすれば、「え?経済学ってこんなこと学ぶ学問なの?」と思うような内容だ。でも面白い。経済学を勉強している人も、そうでない人も楽しめるはず。
いくつかの「conventional wisdom(社会通念)」が本当に正しいか、データに基づいて実証している。データはウソをつかないというのが著者のスタンスらしく、僕はもうこの著者の流儀に心酔してしまった。現実のデータに目を向けて注意深く分析した結果が、あまりに「ヤバイ」ので、邦訳版は『ヤバイ経済学』と訳されている。
例えば「アメリカで90年代に犯罪率が急落したのは、経済が回復したからでも、警察の犯罪捜査能力が上がったからでもない。中絶を合法化したことで、潜在的な犯罪者がそもそもこの世に生まれなくなったからである!(中絶をするのは、低所得、十代の若者など、育児能力がない人に多く、そういう恵まれない子供は将来犯罪者になる可能性がとても高いことに触れている)」みたいなことが書かれているから。
もうひとつ例を挙げると、相撲の八百長の存在も立証している。まず著者は7勝7敗で千秋楽を迎えた力士がすでに8勝を確保している力士と勝負すると、「統計的に見て勝ちすぎる」ことを示す。さらに、この同じ二人の力士がその次に(勝ち越し、負け越しに関係ない場面で)対戦すると、7勝7敗だったほうが「統計的に見て負けすぎる」ことを指摘する。つまり、星の借り貸しがあることを統計的に洗い出している。
伝統的な経済学者というのは、データと向き合わず、紙と鉛筆と数学モデルで世の中のことが分かった気になれる幸せな人たちの総称なんだが、この本の著者はあまりにもそういう伝統的な経済学者とはかけ離れている。
とは言え、著者のLevittは、Harvard卒、MITでPhD、Chicagoの教授、ジョン・ベイツ・クラーク賞(ノーベル賞より難しいといわれることもある経済学の栄誉ある賞)受賞、という学界でも高いポジションにいる経済学者。Levittの影響で、これからの経済学はようやく「現実に目を向ける」という方向に向かうのかもしれない。なんせLevittは、たとえば、親が子供の将来にどういう影響をもつか分析する話題で、
we are less pesuaded by parenting theory than by what the data have to say. (我々は、子育てに関する理論よりもデータを信頼している。)
とはっきり書いているのだから(pp.157)。
株安ニュースを見て,中身が完全に対立する二つのレポートをテキトーに書いてみる.
Bull(強気)の立場
今朝起きたら,ダウ平均が下げている,というニュースが飛び込んできた.その余波は日本にも来るだろうとみんな考えたはずだが,実際そのとおりになった.今日の日経平均の下落が,「みんなが思ったことは実現する」,という心理的要因に過ぎないのか,あるいは,実際にファンダメンタルが下げているのかは明白.前者に過ぎない.これは市場参加者の根拠なき弱気でしかない.根拠はないのだ.その証拠に,為替相場は,世界同時株安を受けて円高に動いた.これは米国と比べたときの相対的な日本の先行き期待感を示している.よって,この下げは一時的で,むしろいまこそ「買い」だ.すぐに回復する.
Bear(弱気)の立場
今朝起きたら,ダウ平均が下げている,というニュースが飛び込んできた.グローバリゼーションのご時世,世界中のマーケットは繋がっている.ダウ平均に続き,日経平均株価も連鎖的に下げた.ただしこれはきっかけでしかない.先日の日銀の利上げニュースおよび追加的利上げ観測がその本質である.これによって債券などの株式以外の証券の相対的な魅力が高まるだけでなく,企業の投資コスト増から来る景気先行き不安感から,潤沢な資金は株式市場から引き上げつつある.さらに日銀および安倍政権に対してその能力の欠如を不安視する声が高まることが予測されることから,この下げはしばらく続くものと思われ,いまこそ「売り」だ.
テキトーに書いたつもりだけど,それなりに説得的な気もするが,どうでしょう.ところで,今朝,テレビ東京でドイツ証券の武者さんが株安についてコメントしていた.強気の予想だった.今年の終わりには,日経平均は,2万2000円くらいいくって予想だった.ネットでこの人の評判を調べると,「この人は悲観論者」「この人の分析は当たらない」という感じの意見多数.悲観論者が強気ということは,今年は下げるのであろうか?
http://onimanju.cocolog-nifty.com/blog/2006/05/post_f52e.html
http://blog.livedoor.jp/ken122876/archives/50211571.html
http://live9.2ch.net/test/read.cgi/stock/1085824538/
http://www.asyura2.com/2002/hasan13/msg/485.html
で,実際に武者さんのコメントが書かれている記事がこれ.
http://www.nikkeibp.co.jp/style/life/money/savvy/061016_musha1/
もう少しくわしく解説しましょう。2000年代、世界経済を牽引(けんいん)する先進国企業は非常に恵まれた環境にあります。この環境をつくり出しているのが、低い労働コストとインターネット革命。インドや中国など新興国の台頭により、先進国企業は、優秀な労働力を安価で利用できるようになりました。これに加えてインターネットの普及が、労働コストと資本コストを抑えることに大きく寄与しています。生産性の向上に牽引された経済成長が世界的に持続している状態です。
経済先行き期待感の根拠を,部分的にではあれインターネット革命に帰するのは,慎重に考えたほうがよいと思う.インターネットの登場で,これまでには考えられ無かったくらい大幅に仕事の効率性があがって経済が成長する,という考え方は,なるほど尤もらしい.でも,本当かな?
これまで,人類はすごい発明はいっぱいあった.鉄道,自動車,電話,ファックスなどなど,あげればきりがない.いままでのこれらのすごい発明に比べて,インターネット革命がどの程度すごい発明かというと,いくらネットがすごいとは言え,「それほど突出したものではない」のではないだろうか.そうであれば,少なくとも,「過去に経験したことがないくらいの経済成長がインターネットによって可能,とは考えられない」というべきだと思う.
とは言え,ネットの進展と,経済成長を結び付けたいのは分かる.ネット大好きな僕も,結び付けたい.けど,実際にどの程度寄与しているのかは,慎重になったほうがいいと思う.
株価などの金融資産価格の変動を説明するとき,経済学者はある種の情報を考える.ある情報があったとする.この情報を使って,株で大儲けすることが可能だとしよう.そんな情報はあるだろうか?もしそんな情報があるとすれば,その情報を使って,とっくに他の誰かが大儲けしているはずである.しかし現実に誰もまだこの情報をつかって大儲けしていないということは,この情報を使って株で大儲けできないことを示しているのだ,と経済学者は考える.
この経済学者の考え方を巡って,有名なジョークがある.
道端に1万円札が落ちていた.ある学生がそれを拾おうとすると,経済学の教授は言った.『やめたまえ,もしそれが本物ならば,とっくに誰かが拾っているはずだ.それは偽者だよ』.
経済学者の考え方が正しいとすれば,必死に世の中のいろいろな情報をつかってファンダメンタル分析なりテクニカル分析なりを行っている証券アナリストと呼ばれる金融機関のバックオフィスで働く頭脳を否定することになる.だから,これは金融実務家が経済学者を笑うときによく言われるジョークらしい.
現実に,そんな情報がそこらへんに落ちているのだろうか?この問題を巡って,経済学者たちは大量に論文を書いてきた.しかし結論は出ないまま,みんな飽きちゃった,という感じ.学者も人間なので,新しい面白い研究テーマが出てくると,古い研究テーマの結論は出さないまま,そちらへ飛びつくものだ.
さて,僕の考えを書くと,「そんな情報はほとんどない.でも,たまに落ちている」という感じか.どれくらいの頻度でそんな情報は落ちているのだろう?きっと,金融実務家が思うよりははるかにレアで,学者が思うよりははるかにたくさん落ちている,というのが僕の考え方.
カンタンな話だ.道端に1万円はまず間違いなく落ちていないが,1円玉,5円玉はよく落ちている.10円玉もよく見かける.50円玉はどうだろう?100円玉は?500円玉ともなると,落ちていることはほとんどない.
10円玉を拾うコスト(=株の場合,売買コスト)まで考えると,もうほっとんどそんなおいしい話は落ちていない,というのが現実だと思う.
10円玉を少し拾ったって小銭を稼ぐ程度だが,塵も積もれば山となる,ということで,大量に拾いまくって大儲けしたのがLTCMだったと僕は考えている.ここら辺のことは,過去のエントリーでも書いた.
そんな情報は落ちていないのが現実,ということになる.そういう市場のことをよく,「市場はあらゆる情報を織り込み済み」とか言う.それならば,情報量が多ければ,株価変動も多いはずだ.そして休日を挟んだほうが溜まる情報は,平日よりも多いはずだから,休日明けのほうが,株価変動は大きいのではないだろか?また,休日を挟めば,その間に得られた情報は月曜日の朝まで,株価に反映されないから,月曜の朝の最初の数秒,市場にゆがみが訪れて,儲けることが出来るのではないだろうか?休日に得たある情報があって,その情報を使えば株で儲けられるのだが,市場は開いていないから,月曜の朝をみんなが待っている.獲物を静かに狙うサバンナの猛獣のようなたくさんの投資家たちが,日曜の夜に息を潜めているのが想像できる.
現実には,月曜の朝を狙ったとしても簡単には儲けられないだろう.同じことを考えている人がたくさんいるわけだから,あっという間に株価はその「ある情報」を織り込んでしまうだろう.結局,一人当たりの儲けはたいしたことはない,という状況になってしまうだろう.利ざやは常に有限で,こういう獲物を狙う猛獣の数はたくさんいるから,一人当たりの儲けは,どうがんばってもたいしたことなくなってしまう.
さて,長々と書いたが,休日明けの株価変動は,平日に比べて,大きいのだろうか?休日が株価変動(ボラティリティ)に与える影響を研究した論文はけっこうある.あまり詳しくは知らないけど,本当にこういう研究をしたければ,ティックデータ(秒単位の株価データ)を使うべきなのだろう.日次データ「ごとき」でその特性をあらわにしてしまうほど,株式市場はヤワはないのでは,と思っている.
今年になってからの,日経平均の日次終値のグラフを描いておこう.休日のところで,折れ線グラフ途切れている.
これを目視する限り,休日明けには株価変動が大きい,とかそんなことは言え無さそうじゃない?「日次データごときで俺の分析しようなんて甘いんだよ,学者先生!」という株式市場の声が聞こえそうだ.
内閣府が15日発表した昨年10―12月期の国内総生産(GDP)の速報値は物価変動の影響を除いた実質ベースで前期比1.2%増、年率換算で4.8%増となった。7―9月期に大きく落ち込んだ個人消費が2期ぶりにプラスに転じたほか、設備投資が引き続き堅調に伸び、内需主導の成長に戻った。プラス成長は8・四半期連続。低成長にとどまった7―9月期の反動ともいえるが、日本経済は総じて息の長い景気拡大を続けているといえる。
実質GDP年率4.8%成長、10―12月期@NIKKEI NET
明るいニュースに対して,株式市場は素直に反応した.
前日の米ダウ工業株30種平均が過去最高値を更新するなど米株式相場の上昇に加え、取引開始前に発表された2006年10―12月期の実質国内総生産(GDP)速報値が年率4.8%増と市場予想を上回り、国内景気の拡大を好感した買いが入った。
日経平均5日続伸、終値144円高の1万7897円@NIKKEI NET
実質GDPが成長しているなんて話になると,当然,日銀の利上げ観測&政府によるけん制の動きも出てくる.うっとおしいので,政治のことはとりあえず考えないことにする.
このニュースのポイントは,「予測が外れた点」だと思う.
実質GDPが成長した,というのももちろん,市場にプラスの影響を持つ.その数字が,年換算で4.8%という高い水準にある,という事実も,市場にプラスの影響を与えたと思う.しかし一番のポイントは,「4.8%という数字が,事前の予測を上回った点」にあると思う.
もし4.8%が事前の予測されていたら,今日株価はこれほど上がらなかっただろう.4.8%という予測が立てられた時点から,じわじわと株価が上昇してきて,今日4.8%という数字が発表され,「お,やっぱり4.8%だよ」程度の反応しか市場は示さなかっただろう.
現実に,人間は経済予測を立ててもぜんぜん外れる.この事実に対して,経済学者が大好きな合理的期待という概念は,どう対峙すべきなのだろう,と思った.
自分の持つファイナンス理論の知識を参照しつつ,現実の株価指数や為替レートを観察していると,考えさせられることが多い.具体的にどんなことをいま感じているか,メモ.
(1)それが正確な解説かどうかはさておき,「現実株価の動きの尤もらしい解説」を思いつくこと自体はかなりカンタン.要は真理の追究というよりは,いかに他人を説得できるロジックを構築するか,ということなので,極端に言えば,「複数の尤もらしい解説」を作れる.
(2)正確さを求めると,経済学やファイナスなどの知識をベースに,「どの解説が,現実株価の動きの何%を説明しているか?」を,データを用いて計量的に分析しなければならない.合計が100%に近くなるまで,要因をリストアップしなければならない.
(3)よって,さまざまな経済記事にある株価の動きの解説記事を読んで「これって本当か?」とか「本当だとしたら,株価変動の何%を説明しているのか?」ということを考えることが,自分の経済学の見識,経済センスを強化する.(株価変動の要因を全てリストアップすることは不可能な点に注意.例えば二つ,考えられる要因があったとしよう.要因①は70%くらい,要因②は25%くらいの要因となっている,とかいうことを知りたい,ということ.)
ドイツで開催されていたG7.G7とは世界主要七カ国の財務大臣とか中央銀行総裁とかが集まって,世界経済の現状と問題点を確認して対策について議論し,声明を発表する場所で,市場に対して影響力がある.だって,世界のえらい人たちが一同にあつまって,みんなそろって「最近の円安は問題だ」とかいう声明を出したら,投資家としては,「そうか,これからえらい人たちは円高になるように努力していくのかな」とか考えるので,マーケットに影響を与える.(ちなみに,Krugmanはこの本で,G7が共同して世界経済の問題に取り組んだってたかが知れている,とか言っていた.)
円キャリー取引に懸念の声【エッセン=小野田徹史】先進7か国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は、声明で、日本経済の回復が「市場参加者のリスク評価に織り込まれていくと確信する」と明記した。その後のG7関係者の発言から、声明が指摘した「リスク」とは、円安の要因になっている「円キャリー取引」の拡大を強く意識したものであることが浮き彫りになってきた。
G7終了後、国際通貨基金(IMF)のロドリゴ・ラト専務理事は記者団に対し、「投資家は円キャリー取引から生まれる利益だけでなくリスクにも気づくべきだ」と発言した。ドイツのペール・シュタインブリュック財務相も、G7後の議長国記者会見で、円を名指しこそしなかったものの、「キャリー取引の問題を含め、市場はリスクを認識してほしい」と強調した。
G7関係者が相次いで言及した「円キャリー取引」は、低金利の円で調達した資金を金利が高い外国通貨と交換して資産運用するもので、円を他国通貨と交換する際、大きな円売り圧力が働く。この取引が拡大している背景には、日本の超低金利政策があり、独財務相らの指摘は、日本の金融政策に疑問符を突きつけたものとも言える。
日本銀行は20、21日に金融政策決定会合を開き、追加利上げの是非について「詰めた議論を行う」(福井俊彦総裁)方針だ。超低金利政策に対するG7諸国の見方を金融政策の運営にどう反映させるか、日銀は重い課題を背負った。
で,現状は円安なんだけど,もしここで「円安って問題だよ」とG7が宣言したら,株安になると考えられていたが,実際にはG7は「円安って議論すべきだけど,大問題ではないよ」程度にとどまったので,株安にはならず,むしろ株高になる一因となった.それで,僕は日経平均は下落すると予想したが,見事に外れたわけだ(ここ参照).
ここら辺の説明は,以下が分かりやすいかな.
ただ、独エッセンで9―10日に開いた7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が共同声明で円安に直接言及せず、円安是正を材料とした日銀の追加利上げ観測が後退したことが下値不安を和らげている。
東証寄り付き・反落後に一時上げる G7円安言及せずが下支え@日経新聞
ここで,利上げ観測があれば,株安になる,という経路もある点に注意.なぜならば,消費者は(消費も含めた)ポートフォーリオの中身を組み換えて,債券保有率を高めるから,とかいうのがよく言われる理由.
為替レートと株式市場(と金利)の関係について,自分の頭を整理したい.よく為替レートと株式市場の関係について新聞記事などで読むことがあるが,両者の関係について,自分の頭が混乱している.以下の社説にあるように,金利についても考えなければならない.
G7会議では、最近のユーロ高で輸出競争力の低下に苦しむ欧州勢が、特に円安に懸念を表明した。米欧に比べ低い日本の金利で円を借りて金利の高い他国の金融資産などに投資する円借り(円キャリー)取引も、円安を助長していると問題視する声も出た。尾身幸次財務相も会議後の記者会見で「一方的に偏って行動することのリスクを認識することが望ましい」と述べ、円安の背景にある投機的な取引をけん制した。
社説1 市場の潜在リスクに警鐘鳴らしたG7(2/12)@日経新聞
円キャリー取引とかいう言葉が出てきていて,話に為替レート,株式市場だけでなく金利も登場している.
つまり,論理はこんな感じ.
日本は低金利
→国内投資家は円キャリー取引
→円安
→日本株高
という現状で,G7で「円安なんとかしろ」となったら,なんとかするために日銀がさっさと金利引き上げをするなどして円高に向かわせることで,株安が来るのでは,という発想.(くどいが,利上げ観測そのものも株安を誘発する.)
ここまで暗黙の了解として,円安→株高,円高→株安という論理を使っている.実際,2005年から2006年までの2年間,為替レートと日経平均の月次(月中平均)をとってグラフを描けば,こんな感じになる.
まぁ,確かに円安→株高,円高→株安が成立しているっぽいね.ここ2年ほど,確かに日本円は円安の方向に向かっていることも確認できる(上図).だけど,1971年からのデータをグラフに描いてみると,為替市場と株式市場にそんな関連性があるとは思えない(下図).
というわけで,為替レートと株式市場の関係について,どういう関係にあるか,実ははっきりしたことが僕は分からない.おそらく実証的に知るしかないような気がする.誰か,ここらへんの関係を明快に説明できる人いませんか?(為替市場と株式市場だと,為替のほうが売買規模が圧倒的に大きい,とか,貿易を通じた企業業績への影響,などなど,いろいろな要因があって,計量的に知るしかない気がするんですが・・・直感的には,企業は為替リスクを近年になってヘッジする経営努力をするようになってきているので,二つ目の要因・経路は,近年,相対的に小さくなっている気がする)
話は変わるが,
こうした資金は円相場と新興市場国の二つのリスクを知らず知らずのうちにとっている可能性がある。日本国内の超低金利、円安が永続するわけではないし、新興市場国の成長が一本調子で続くとは限らない。
社説1 市場の潜在リスクに警鐘鳴らしたG7(2/12)@日経新聞
僕は,円キャリー取引をするような人間ならば,二つのリスクがあることをちゃんと理解していると思うのだが・・・素人は円キャリー取引にうかつに手を出すな,というメッセージなのかな?
長々とエントリーを書いてきたが,
(1)ここ2年ほどの円安の原因を知りたい(内外金利差だけじゃないんでしょ?)
(2)為替市場と株式市場の関連性を知りたい
(3)G7が市場へ与える影響の大きさを知りたい(去年のG7は,世界同時株安と関連していたのか?)
(4)いったいいつ利上げするんだ日銀
(5)バーナンキはどれくらい利上げする気なんだ(インフレとどう戦うんだ)
という感じの疑問を,自分の脳から抽出して,おやすみなさい.
連休中に,今日の日経平均株価指数の終値の予想をした(ここ参照).
予想:17388.77円
現実:17621.45円
・・・というわけで,ぜんぜん外れました.株価は下落するという予想だったが,逆に上昇した.しかも,
東京株式市場は、3営業日続伸。日経平均は終値で昨年来高値(2006年4月7日終値1万7563円37銭)を更新。日経平均終値は、前営業日比117円12銭高の1万7621円45銭となり、2000年5月10日(終値1万7701円47銭)以来、約6年9カ月ぶりの高値水準となった。
東京株式市場・大引け=3日続伸、日経平均終値は約6年9カ月ぶり高水準
,朝日新聞
とあるように,2000/5/10以来の高値水準となった.
予想が外れたといったが,他のモデルを使えばあたっていたかもしれない,という考え方もあるだろう(例えば,ARMAモデルではなく,ARCH型モデルなどをなぜ使わなかったんだ,とか).しかし,他のモデルを使ったとしても,たぶんあたらなかったんじゃないかな,と思う.
また,使ったデータが多すぎる,という意見もあるかもしれない.直近の1年分くらい使えば十分で,35年以上もの膨大なデータを使わないほうがいい,という人もいるかもしれない.しかし,僕はこれについても懐疑的だ.
経済学や時系列分析の知識をどんなに駆使しても,明日の株価予測なんて出来ない,と僕は思っている.そうすると,経済学に対する失望が聞こえてきそうだが,逆だ.どういうことかというと,「株価にはあらゆる情報が織り込まれているからこそ予測は不可能なのであって,それだけ市場は万能・効率的なのだ」と学者はむしろ考える.「もし株価予想が可能だとすれば,誰かがその儲けるチャンスでちゃっかり儲けているはずで,そんなチャンスが転がっているはずがない」という考え方だ.これは,「経済主体は効用最大化・利潤最大化するはず」という経済学者の前提に基づいている.つまり,人はみな合理的だという経済学者の頭を支配している概念と整合的なので,むしろ経済学者は「株価は予想不可能」という考え方を歓迎するのだ.
「どんなモデルを使ったとしても,常に予想を当て続けることなど出来ず,市場を打ち負かすことなどできない」という学説があって,これを市場効率仮説と呼ぶ.
今回の予測では,日経平均の予測をするのに,過去の日経平均データのパターンを統計的に抽出する方法をとった.このように,過去の株価を見るだけでは将来予測が出来ない場合,弱度の市場効率仮説が成立しているという.
また株価に影響を与えうるあらゆる経済変数(例えば,金利,企業の業績発表情報,景気指標,などなど)をつかってモデルをつくっても,予想は不可能な場合,準強度の市場効率仮説が成立しているといいう.
さらに,強度の市場効率仮説は,インサイダー取引のように,特別な情報に基づいても株でもうけられない,と主張する.
経済学者は,弱度の市場効率仮説はほぼ現実に妥当していると考えているが,強度の市場効率仮説までもが現実に成立しているとは考えていない.準強度の市場効率仮説の妥当性については,「意見の一致が得られていない」という感じだと思う.
市場効率仮説みたいな学説は,経済学者の「市場への絶対なる信頼」がベースにある.この仮説にまつわる実証分析は1990年頃まで膨大に行われたが,結局,テクニカルな問題もあって,決着がつかないまま,「学者はこのテーマにみんな飽きてしまった」という印象を持つ.
遊びでやってみよう.あくまで遊びなので,僕の分析を信じるかどうかは自己責任でお願いします.
予想するには,いろいろな方法があるが,ここでは時系列分析の手法を用いる.時系列分析とは,日経平均株価の過去の時系列データを見て,一種のパターンを見出し,このパターンに基づいて未来を予測する分析方法.
使うデータは,日経平均株価,日次の終値データ.サンプル期間は,1972/1/4~2007/2/9.データ数(サンプルサイズ)は 9299個.尚,データの出所は2006/3月までは日経NEEDS,2006/4月以降の最新データは,ここより取得した.
まず,基本的な情報.
これが,ここ35年ほど,一昨日までの日経平均株価の推移.

で,これが,収益率データに変換したデータの推移.

青色は,ここで示された期間の中で一番大きな上昇率を示した1990/10/2を示している.この日,日経平均株価は約13%の伸び率を記録した.日次で13%の上昇は,驚異的だ.面白いのは,これを記録したのが株価が1989/12/29にバブル最高値の38,915.87円を記録した後である点だ.図を見れば分かるとおり,青色で示されたところでは,既に株価が坂道を転げ落ちている最中である.坂道を転げ落ちる最中の1990/10/2に,どいういう訳か約13%という歴史的な伸び率を記録しているのである.
反対に,赤色は,ここで示された期間の中で一番大きな下落率を示した日を示している.アメリカでブラックマンデーと呼ばれた1987/10/19の翌日の1987/10/20で,たった一日で約15%も日経平均株価は下落した.
もう一つ,図を観察すれば気づくことがある.それは,1992,3年頃を境に,株価収益率の変動幅が大きくなっていることだ.株価そのものの変動性ではなく,収益率でみているので,株価の水準そのものは影響されないから,1992,3年頃以降,日本の株式市場は確かに変動性が大きくなっている=リスクが大きくなっている(=リターンも大きくなっているっぽい)ということまで分かる.
以上,余談.次,本題.つまり,週明けの2007/02/13(火)の日経平均株価を予想してみよう.時系列分析では,学術的な理由あって,収益率データを使うことが多い.ここでも収益率データを使った.
分析結果を先に示すと,来週火曜の日経平均株価の予想は,17388.77円.どうやってこの数字にたどり着いたか知りたい人は,続きを読んでください(激しく専門的なので,経済学の院生とかでないとまったく理解できないと思います).
インフレのコストとはなんだろうか?なぜ,物価が高くなるのって問題なんだろう?
人はみな,「インフレは悪」という漠然としたイメージを持っている.確かに,今日100円で買ったジュースが来年200円になったら,嫌な気がする.しかしインフレは一般物価水準の上昇なので,ジュースが2倍になっていたのなら,あなたの給料も2倍になっているはずで,実害は無い.
それならば,インフレって一体何が問題なんだろう?
「そもそも,なんでインフレって問題なんだっけ?」という根本的な問いを考えてみると,この問いに対して,経済学者の間では満場一致の答えがある(経済学の世界で,「満場一致」の答えが得られる問いは少ない!).けっこう知られていないようなので,啓蒙がてら,書いてみよう.
よく言われる(そして大して現実には問題ではない)理由は二つある.
一つはインフレは「靴底コスト」を発生させるから,というものである.「靴底コスト」とは,人々が銀行にいく頻度が上がるために「靴底が磨り減ってしまう」というコストである.なぜ銀行によく行くようになるかというと,インフレになると人々はみな自分のお金を銀行に多く預けるようになるからである.なぜそうなるかを理解するためには,極端なケースを考えればよい.例えばインフレ率が100%の世界を考えよう.つまり,来年の物価水準が2倍になるような世界である.この世界で,例えば100万円を手元においておいたとしよう.そして今この100万円でトヨタのカローラが購入可能としよう.すなわち,今,カローラは100万円で売られているとする.来年には,物価が2倍になるのだから,カローラは200万円になる.だから,手元の100万円は,来年には実質的な価値が半分になってしまう.インフレのとき,手元の現金はどんどん価値が目減りしていくので,みんなより多くを銀行に預けるようにするのだ.銀行に預けておけば,金利がつく.この金利は,インフレ率よりは高い水準にあるから,インフレになっても実質的価値が目減りすることはない.
もう一つの理由は(そして,これも現実にはNo Problemな理由),「メニューコスト」なんて呼ばれる.これは,インフレで物価が上がると,それにあわせてレストランのメニューの価格表示を変えるために,メニューを刷新しなくてはならないコストを意味する.
しかしこの二つは,理由としてはちゃっちい.インフレにはもっと根本的な問題がある.その根本的な問題は,「異時点間の経済主体の意思決定を歪め,経済的効率性を損なう」という点である.さらに,「予期できないインフレのみが悪」ということになる.
以下で,これを説明してみよう.例えば,お金をあなたが銀行から借りたとしよう.期間は長期としよう.このとき,当然,契約書にはある利子率が明記されている.この利子率は,今後何年間かのインフレ率に基づいて決定されるが,今後何年間かのインフレ率は,いまの時点では分からない.そこで,「たぶんこれくらいの率で物価は上がるだろう」と予想し,この予想に基づいた利子率が明記されることになる.この予想のことを,経済学者は「合理的期待」と呼ぶ.
具体的な例を挙げれば,簡単だ.例えば,2007年現在,ある人が住宅ローンを30年で組んだとしよう.30年満期の住宅ローン金利は,どうやら今の相場を見れば,大体3%くらいのようだ.この背後には,今後30年間の平均インフレ率があまり高くないだろう,という予想に基づいている.例えば,その数字が1%だと考えているとしよう.すると,物価が1%あがって,金利が3%なのだから,その差,2%分が銀行の利益となる,と予想しているのだろう.そして,この2%だけが,この人が銀行に支払うのに実質的負担しなければならない金利なので,これを実質利子率と呼ぶ.
ある人と銀行は,「たぶん今後30年でインフレは平均1%だろうから,2%の実質金利でお金をの賃貸契約を結びましょう」ということに合意して,契約を結ぶことなる.
ところが,実際に例えば今後30年間でインフレが平均3%もあったとしよう.すると,当然,この人の給料も年間3%あがるので,この人は実質的には銀行に対してまったく利子を払っていないことになる.払うべき金利は3%だが,自分の給料も3%あがるのだから,実質的な負担はゼロになる.もちろん,このある人はすごく嬉しいが,銀行からすれば,「実質的には無料でお金を貸したことになる」という事態なわけである.これは,人々の間の富の再配分を強制し,富の配分を歪めるので,経済学的によろしくない,ということになる.これが,「インフレのコストってなぁに?」という問いに対する答えである.
銀行はこういう金利設定をよく考えた上で行っているから,実際,ここまで極端なことは実現しないだろう.インフレのコストを説明するために,あえて極端な例を考えた.当然,この逆のケースもありえて,「借りる側が損をする」可能性もある.
ここで,「予想したインフレが的中した場合」,何の問題も無い.問題は,「予想を外した」ため生じる.だから,「予想できないインフレ」のみが問題なのである.
以上の説明は,経済理論に即した場合の,正解である.当然,現実の世の中で採られる経済・金融政策は総合的に考えるべきである.インフレのコストを正しく理解したら,次は,「インフレをなんとかする政策ってあるの?あるとしたら,その政策を実行するコストって,どれくらいなの?」ということを考えなければならない.問題があったとき,その問題を放置するコストがいくら高いと言っても,問題を解決するコストのほうが高ければ「放置すべし」が合理的な解になり,経済学者にはこういうクールヘッド(Cool Head)が求められる.これについては,また長くなるので,別のエントリーで.
新しくカテゴリーを作成しました。経済学を学んでいるのに、現実経済のことが僕はまったくわかっていない。経済学の大学院でよく出来る学生というのは、必ずしも現実経済を目を向けているとは限らない。いや、むしろ現実経済にはあまり関心がない人のほうが多いくらいかも。
いつも勉強しているときはαだのβだのγだの、およそ現実経済とはかけ離れた、ただの記号とにらめっこしている。これはまずいと思うので、自分自身の目を現実経済に向けさせるために、こんなカテゴリーを作成してみた。
いま頭の中にあるのは、
・株価の動きを説明する
・債権価格の動きを説明する
・為替の動きを説明する
・金利の動きを説明する
・実際に採用される金融政策、財政政策について、(政治的なことはさておき)経済学的に考えてみる
・輸出入量の動きを説明する
・不動産価格の動きを説明する
・新聞の経済記事などに書かれている誤りを指摘し、正しい経済理論を基にして正す。
・年金問題を経済学的に考える
・人口問題を考える
・インフレのコストを考える
・財政赤字のコストを考える
・異時点間の経済厚生の比較について考える
・貯蓄率の動向について考える
・・・といった感じの内容です。
せっかく獲得した経済学の知識を有効利用しよう。現実の経済を分析できる目を養おう。
(追記)
せっかくなので,このカテゴリーでは,「経済学の素人に対する,経済学の啓蒙活動」も併せて行おうと思う.


