2007年3月アーカイブ


著者の足立恒雄教授は早稲田大学の理工学部長で、数学史などが専門らしい。けっこう面白かったので、ほかの著書にも手を出してみようかな。

本書は、「歴史上のえらい数学者が『無限』にどう立ち向かってきたか」という視点から書かれた数学史の本。例えば、ゼノン、プラトン、アリストテレス、ユークリッド、アルキメデス、コペルニクス、ティコ・ブラーエ、ガリレオ、ケプラー、デカルト、フェルマー、ニュートン、ライプニッツ、テイラー、オイラー、フーリエ、ガウス、コーシー、ワイアシュトラス、クロネッカー、デデキント、カントル、ヒルベルト、ラッセル、ゲーデル、といった超有名数学者が次から次へと登場し、彼らが何を考え生きたかを追っている。

あらためて思ったのが、ここでも書かれていることだけど、現代人が習う数学の順序とは逆向きに数学は発展してきた、ということ。

現代人は、集合論→実数の性質→極限→微分積分、という順序で習う。けど、数学史でみれば、微分積分が先に見つかってから、無限とか極限とかいう概念について解析学的な基礎付け、考察が行われていった。で、最後にカントルの集合論が登場することで、無限にも大きな無限と小さな無限があることが証明される。

順番が逆であることが、ひょっとして最後の無限のパラドックスかも?!

学会発表用のプレゼンファイルを作りはじめた.久々にパワポをいじってみた.昔はけっこうよく使ってたんだけど,最近はほとんど使ってなかった.

で,昔ちょくちょく参考にしてたこんな本を引っ張り出してみた.

マッキンゼー流図解の技術マッキンゼー流図解の技術
ジーン ゼラズニー 数江 良一 管野 誠二

東洋経済新報社 2004-08-20
売り上げランキング : 2100

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

いまだに参考になる.「図のタイトルは,テーマ・タイトルではなく,メッセージ・タイトルにしろ」とか,いいアドバイスだと思う.(「売り上げの推移」みたいなテーマ・タイトルではなく,「売り上げは増加している」みたいなメッセージ・タイトルにせよ,ということ.)

今度のファイナンス学会での研究報告をどうやってやろうかな,と思ってプレゼンについてふと考えをめぐらせていた.ら,アップルのスティーブ・ジョブズが2001年にiPodをお披露目したときのプレゼン動画をyoutubeで発見.

おぉ.印象としては.(1)必要十分なことを10分以内に言い切っている(2)本人も「これをみんなに伝えたい」とわくわくしている感じが伝わる.

そうか.じゃぁ今度の学会報告では,
(1)Get to the point ASAP(As Soon As Possible)
(2)Always smile and Enjoy
を心がけよう.PPTスキルなんかあって当たり前.

昨日ショッキングなことがあったんだが,プラス思考しようと思って,この論文をちゃんと読んでみた.

http://web.mit.edu/alo/www/Papers/JIC2005_Final.pdf

著者は,『ファイナンスのための計量分析』でも有名なMITのAndrew Lo教授.計量ファイナンスの世界で大御所.

この論文では,Adaptive Market Hypothesisなる仮説が提案されている.直訳すれば,「適応市場仮説」とでもなるのかな.ここで「適応」とは,生物学における進化論と同じ意味でLoは使っている.つまり,生物が環境の変化に適応しようと進化していくのと同様に,市場参加者が市場環境の変化に適応すべく,進化・変化していくようなモデルを考えている.

通常,経済学者は「合理的期待」とか「均衡」とかいう概念が大好き.人々が合理的ならば自己の効用なり利潤なりを最大化するはずで,その結果達成される市場均衡は,非常に良い状態(具体的にはパレート最適とか)になれるんだ,この考え方が経済学の基本.アダム・スミスの「神の見えざる手」という表現にこの考え方は凝縮されている.

Loの仮説では,市場参加者は市場環境の変化に適応し進化していく状況を考えるということは,「経済主体は変化する」状況を考える.ところがこれはアダム・スミス以来の上記の経済学の考え方に大きく反する.主流派は,「人は常に効用を最大化している」つまり「人は時代を通じて変化しない」と考える.

まとめると,伝統的経済学では「人々の好みみたいな基本的な性質は,生まれてから死ぬまで不変」と考えるが,Loは「人々の好みは,時代や環境や年齢とともに変わる」状況を考える.だからLoの発想はとても刺激的で,経済学の主流の人たちは到底受け入れないだろうな.

で,まだ院生で24歳の僕は,「は?Loなにいってんの?伝統を重んじようよ」とちょっと思ってしまった.だいぶ経済学の古い世界に漬かってしまったということか・・・.新しい考え方が出てくると,必ず伝統派にたたかれる.いつの間にか僕は「伝統派」にちょっぴり傾いてしまったようだ.新しい斬新なアイディアが出てきてそれが正しいとすると,自分がそれまで時間をかけて勉強したことの価値がなくなるので,伝統派は新しい危険な発想を受け入れ拒否するincentiveが働くから,仕方ないんだけどね.


Loの仮説を読んで思ったのは,不思議の国のアリスの話.


「さあさあ」女王が叫んだ。「もっと速く、もっと速く!」 2人はあまりに速く走ったので、そのうち空中をかすめ飛んで足がほとんど地面に触れないくらいになった。アリスは不意にすっかり疲れ切って立ち止まると、息切れとめまいを起こして地面に座り込んでしまった。

女王はアリスを木にもたせかけて立たせると、優しく言った。「少し休むといい」

アリスは周りを見回して驚いた。「あら、ずっとこの木の下にいたみたい! みんな元のままだわ!」

「もちろん元のままだとも」と女王が言った。「どうなると思ったの?」

「だって、私たちの国では」アリスはまだ息を切らしながら答えた。「普通どこか別な場所に着くものだわ——あんなふうに速く長い間走っていれば」

「それはまたのろまな国だこと!」女王が言った。「ここではね、同じ場所に居続けようと思ったら、ずっと走ってなきゃいけないわ。
どこか別な場所に行こうと思ったら、その2倍は速く走らないと!」

ソースはここ

時代(市場)も動いているし,周りも動いている(市場参加者ももうけるために分析している)んだから,普通に動いている(普通に投資)だけでは,同じ場所にいるだけ(市場平均のリターンを得るだけ).誰かより先に行きたかったら(市場平均を凌駕したければ),二倍の速度で歩かないと(とっても有能でないと)いけない.

こう書くと,Loの発想のほうがむしろ自然だと,経済学の素人は思うかもしれないね.

『市場効率性の時変構造』というディスカッション・ペーパーが完成しました.というわけで,論文の宣伝.以下より無料でダウンロード可能です.

http://www.sugi-shun.com/papers.html

この論文は,今年6月17日(日)の日本ファイナンス学会,第15回大会@慶應大学三田キャンパスで報告予定です(確か午後の部だった気がする).興味のある方はぜひ.

ところで,「お前のblogは難しすぎる.意味不明.」という指摘を何人かに受けた.尊敬される専門家とバカにされるオタクの違いは,「自分のやっていることを,その分野の素人にも分かってもらう気があるかどうか」だと思う.オタクもいいが専門家のほうがもっといいので,もっとみんなに分かってもらえるように努力します.

というわけで,論文を,素人向けに説明をしてみよう.

論文の主張は,「株の動きの予想がカンタンな(したがって儲けやすい)時代と,難しい(したがって株で儲けにくい)時代がある」ということです.

この研究によれば,例えば次のようなことが分かった.
・戦後もっとも株価の予想がカンタンだったのは,1960年頃,1973年頃,1987年頃の3つの時期!逆に,株価予想がもっとも難しかったのは,1992年頃!
・アメリカと比べると,日本のほうが株価は予想しやすい!

株価は予想可能かどうか,という研究は,これまで学者たちは大量にやってきた.大量にやってきたくせに,予想可能かどうか結局,学界は答えを出せていない.

答えを出せなかった原因は,これまでの研究では,「株価は予想可能」or「株価は予想不可能」のどちらか一方のみが真実で,もう一つは偽だと考えていたからだ.

物理学で,「摩擦0の世界」を考えるけど,現実にそんな世界はどこにもないことはみんな知っている.同じように,経済学で「株価が100%予想不可能な株式市場」を考えるとしても,現実にそんな世界はどこにもないのだ.だからといって「株価は完全に予想可能」な世界もどこにもない.

灰色を見て,「これは黒よりは白に近い」と思う人もいれば,「これは白よりは黒に近い」と思う人もいる.そういうときに重要なのは,「どれくらい灰色なの?」という相対的な問題を考えることである.

だからこの研究では「どのくらい灰色なの?」という問いを設定した.昔よりは今のほうが株価は予想しやすい,とか,アメリカよりは日本のほうが株価が予想しやすい,などの,相対的な問題を扱うことにした.

こういう相対的な比較を行なった研究はこれまでないので,そこがこの論文の貢献部分です.

John Cochraneの"Writing Tips for Ph. D. Students"

Chicago大学のCochraneが論文の書き方についての覚書を書いている.

効率主義を徹底しなさい,がメッセージ."Efficiency if Everthing!"という感じ.

どんな内容かというと,たとえば僕がいまここで「Cochraneの言いたいことは,もっと効率的に!もっと能率的に!ということだ」と書いたとしよう.すると,『「もっと効率的に!もっと能率的に!」のような文章では,「効率」と「能率」は同じ意味だから紙面の節約をするために,どちらか一方を削りなさい』という指摘が盛りだくさんな感じの内容.もっと人生のんびり楽めばいいのに.

でも参考になることもたくさん書いてあった.しかも文章にユーモアがあって達筆だから,全部読んじゃった.

Seminar presentationsで,

You don’t need any literature review or motivation in a seminar. Just get to the point. Gene Fama usually starts his seminars with “Look at table 1.” That’s a good model to emulate.

とあるが,これは是非まねしよう.みんなに見せたいのは結局たった一つのグラフだけだったりするから.あとはそのグラフをどうやって作ったか,分析の頑健性の説明は後まわしにすれば,時間切れで結論を言う時間が足りなくなるということにもならないだろう.

Robert Shillerのベストセラー本,"Irrational Exuberance"の2005年のSecond Editionをようやく読了した.First Editionは2000年に出たこれ邦訳版も出ている模様.ただしFirst Editionの邦訳である点に注意.2000年から2005年までの株式市場と住宅市場の分析が追加されているので,当然読むならSecond Editionを薦める.英語の勉強にもなるし.

で,中身.Shillerのスタンスは「効率的市場仮説?なにそれ?そんなもの信じる人いるの?え?信じてる人いるの?うそでしょ?」という感じ.効率的市場仮説については,このエントリーを参照.効率的市場仮説の背後には,学者たちの市場への絶大なる信頼感と,人々は合理的であるという都合のよい思い込みが存在してい.ところがShillerのタイトル"Irrantional Exuberance"(根拠なき熱狂)を見ればわかるとおり,Shillerは「人々が合理的なわけないだろ」と考えている.

とはいえ,Shillerは経済学界でメインストリームに座る権威.従来の経済学者は「人は合理的」を信じ続けていたが,最近は「人は合理的ではない」として心理学を経済学に輸入した行動経済学とか行動ファイナンスとか呼ばれる分野も台頭してきている.

効率的市場仮説を徹底的に信じている学者もいれば,Shillerのようにまったく信じていない学者もいる.信じている学者の代表が,『ウォール街のランダム・ウォーカー―株式投資の不滅の真理』のMalkiel .信じていない学者は,ShillerのほかにCampbell, Lo, MacKinlayなど(3人とも一流過ぎて言葉にできない).ちなみに,LoとMacKinlayはA Non-Random Walk Down Wall Streetという本を出している.真っ向からMalkielにケンカうってるな.Malkielの本の原著タイトルは,A Random Walk Down Wall Street

Shillerは参考文献リストで膨大な文献を挙げているんだが,その中にMalkielの本がないのがおかしかった.さらに,LoとMacKinlayの"A Non-Random Walk Down Wall Street"にも,Malkielの"A Random Walk Down Wall StreetMalkiel"が参考文献にあがっていない!

ShillerとMalkielってきっと犬猿の仲なんだろうな.

どちらの立場も,かなり説得的.Shillerの本を読めば,「効率的市場仮説なんてウソだな」という印象を持つし,Malkielの本を読めば,「効率的市場仮説は概ね正しいな」と思わされてしまう.どちらの立場も,思い込みや印象論だけでなく,ちゃんとした一流の経済学者がアカデミックな根拠を示した上での主張である.

どうして両方の立場が並存しているのだろう?実はこの問いが,僕がやっている研究とつながってくる.僕からすれば,今までの効率的市場仮説の研究のやりかたでは「両方の立場が並存して当たり前」という結論になる.

効率的市場仮説(Efficiency Market Hypothesis)の研究をしている僕としては,良いインスピレーションをもらえた.

米マイクロソフトは3月6日、グーグル(Google)の著作権に関する姿勢を「ぞんざいだ」と批判した。マイクロソフトは、グーグルが書籍や音楽、映画やテレビ番組を、勝手にいいように利用していると糾弾している。

マイクロソフト、著作権めぐりグーグル批判──フィナンシャル・タイムズ

原文はコチラ

一昔前に若者のあこがれ企業だったマイクロソフトが,「私たちは,新興勢力グーグルに恐怖を感じてる,完全な老舗企業になりましたよ」と高らかに宣言しました.なんか,がっかりだ.

Market Efficiencyの論文,今日Discussion Paper化した.そのうち
http://www.econ.keio.ac.jp/org/kes/ja/pub/pdis.htm
からDL出来るようになるはず.今週中にはDL出来るようになるかな?

というわけでこのDiscussion Paperをベースに6月のファイナンス学会での発表前に,セミナーでの発表とかもやったりしていろいろな方の反応を見て加筆修正していこう.フィードバックを反応させてある程度納得いったら英語化してどこかに投稿しよう.

こっちの研究がひと段落したんで,修士論文のことを真剣に考えよう.研究は楽しいな~.

今週はずっと論文に集中していた.

で,論文の完成度が90%にいたって喜んでいる.が,よく考えたら今週月曜の段階ですでに80%くらいできていた.プロジェクトって詰めの20%にかなり時間と労力がかかるという経験則を改めて感じた.

どうにかしてこの悪い経験則を打破したい.月曜には完了させるべし!週末がんばろー.

Googleが調子に乗りすぎている,ということで,Enough is enough, Googleという気持ちが人々の気持ちに生じ始めている・・・かどうかは知らないが,そんなことを匂わすこのジョーク動画.

そんなジョークが現実化しようとしている.

井戸水汲んでるの?


ラクダの影までくっきり見える

上から覗き込む精度が良過ぎ.あとちょっとで表情も読み取れてしまう.

Googleはわれわれに「砂漠は隠れるところないから上から丸見えだよ.」とでも言っているのか?面白すぎるぞ.

屋上でわいわいがやがや

Googleはわれわれに,「プライバシーを死守したければ屋上へ出るな」とでも言っているのか?

今週金曜日までにMarket Efficiencyの論文の脱稿を目指す.絶対に脱稿する.来週,再来週あたりにどこかのセミナーで発表でもする.絶対に発表する.今月中に英文に訳す.絶対に訳す.4月中にどこかの英文ジャーナルに投稿する.絶対に投稿する.

・・・やる気がみなぎっているときに一気に書き進めよう.

このアーカイブについて

このページには、2007年3月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2007年2月です。

次のアーカイブは2007年4月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.21-ja